• 2021年1月28日

次世代スマートメーター向け国際通信規格 Wi-SUN FANの
大規模な高密度接続試験を行う試験機を開発

京都大学 大学院情報学研究科の原田博司教授の研究グループ(以下 京都大学)と、株式会社日新システムズ(以下 日新システムズ)は、次世代スマートメーター向けの通信規格として期待されている国際無線通信規格 Wi-SUN FAN(Field Area Network)の大規模な高密度接続試験を行うための試験機を新たに開発しました。さらにこの試験機を用いて実運用に近い環境で無線機100台による大規模な多段中継接続試験を行うことに成功しました。

■ ポイント

  • B4サイズほどの底面積上に100台の無線機を収納
  • 全ての無線機のファームウェアのアップデートや設定変更、試験シナリオの作成までを1台のPCで制御が可能
  • 全ての端末の通信ログや各種無線機の制御関連のデータを蓄積・解析が可能
  • 今後の実用化にむけた通信パラメータに関する基礎調査の成功
  • 試験機を増設していくことで、最大1,000台程度の大規模な無線機試験環境の構築が可能

■ 背景

スマートシティやスマートグリッドなど、屋外での通信ネットワークを実現するためには高品質で耐障害性に優れた通信ネットワークが必要となります。Wi-SUN FANはこれらの要求を満たす国際無線通信規格「Wi-SUN」の新規格で、電気・ガス・水道のメータリングのほか、スマートシティ、スマートグリッド、高度道路交通システム等のセンサー、モニター等を用いた各種インフラ、アプリケーションにおいて、相互運用可能な通信ネットワーク技術として期待されています(図1)。京都大学と日新システムズは、このWi-SUN FAN 搭載の認証済み無線機の開発を世界初で行い、2020年3月にはWi-SUN FAN搭載USB基板の商用化を行いました(図2)。このWi-SUN FANの各種インフラでの利用可否を検証するには、数百台規模の無線機を用いてさまざまな利用状況を想定した接続試験を行う必要がありますが、このような試験を手軽に実現できる試験機は存在していませんでした。

■ 今回の成果

京都大学と日新システムズが共同開発したWi-SUN FAN無線通信機能搭載のWi-SUN FAN搭載USB基板(以下、USB基板)を10台収容可能な試験機を開発しました(図2、図3)。この試験機を積層することで、B4サイズほどの底面積上に100台のUSB基板を収容できる試験環境の構築に成功しました(図4)。試験機には制御用ホストマイコンを1台配置し、10台のUSB基板の制御や設定変更、ファームウェアのアップデート、および通信ログを取得できます。

そして、今回構築した試験環境を用いてWi-SUN FAN搭載無線機100台による大規模マルチホップネットワークを構築し、通信成功率および遅延時間等の基本伝送特性データを測定し、今後の実用化にむけた通信パラメータに関する基礎調査を行うことができました(図4、図5)。

■ 今後の展開

Wi-SUN FAN搭載無線機100台を用いた大規模実証を行うことで、Wi-SUN FANによるマルチホップネットワークがスマートシティで要求される通信品質を担保していることを確認できました。この結果を踏まえ、今後さらに無線機を500台、1,000台と増やし、スマートメーターが実運用される状態に近い条件で接続試験を行い、高速で高品質な通信を行うための各種通信パラメータ設定値を最適化するためのデータ収集と解析を行っていく予定です。
また、今回の実証に使用した試験機については、Wi-SUN FANによるセンサーネットワーク構築を検討する他事業者等への販売も行っていく予定です。

本研究開発は、総務省 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)電波COE研究開発プログラムの公募で採択された「電波利活用強靭化に向けた周波数創造技術に関する研究開発及び人材育成プログラム(196000002)」における共同型研究開発「Society 5.0の実現に向けた大規模高密度マルチホップ国際標準無線通信システム(Wi-SUN FAN)の研究開発」の一環として実施したものです。

■ 用語説明

  • Wi-SUN FAN (Field Area Network)
    Wi-SUNアライアンスが制定するスマートメータリング、配電自動化を実現するスマートグリッドおよび、インフラ管理、高度道路交通システム、スマート照明に代表されるスマートシティを無線で実現するためのセンサー、メーターに搭載するIPv6で多段中継(マルチホップ)可能な通信仕様です。2016年5月16日にバージョン1がWi-SUN FANワーキンググループで制定され、現在は高速通信、低消費電力化などに対応したバージョン1.1の規格化が進められています。物理層にIEEE 802.15.4g、データリンク層に IEEE 802.15.4/4e、アダプテーション層にIETF 6LowPANそしてネットワーク層部にIPv6、ICMPv6、トランスポート層にUDP、そして認証方式としてIEEE 802.1xを採用しています。また製造ベンダー間の相互接続性を担保するための試験仕様なども提供されています。京都大学と日新システムズでは、ローム株式会社と共同でこのWi-SUN FAN 搭載のWi-SUNアライアンス認証済み無線機の開発を2019年1月世界初で行いました。

■ 京都大学 大学院情報学研究科 原田博司研究室について

京都大学 大学院情報学研究科 原田博司研究室は、京都大学 大学院情報学研究科通信情報システム専攻に所属し、ディジタル通信分野に関する研究開発を行っています。特に原田博司教授は、2012年Wi-SUNアライアンス設立時の共同創業者(Founder member)であり、Wi-SUNアライアンス理事会議長(Chair of the Board)として長年活動し、またWi-SUNアライアンスHAN WG議長として、電力会社向け宅内スマートメータシステム用Wi-SUNシステムの技術仕様策定、普及活動を行ってきました。原田博司研究室では、Wi-SUNシステム全般の研究開発を行っており、主に通信方式、電波伝搬・伝送、システム最適化、応用システム等の研究開発を行っています。

■ 株式会社日新システムズについて

日新電機株式会社(東証1部上場)の全額出資子会社である日新システムズは、これまで組み込みシステム開発で培った機器制御技術とネットワーク技術を土台に、エネルギーをはじめとするさまざまな分野において、価値あるスマート社会を実現していくことで新しい未来をみなさまと共に創り続ける企業です。
Webサイト https://www.co-nss.co.jp/
Wi-SUN FANソリューションページ https://www.co-nss.co.jp/media/press/wsf/

※本資料に掲載する会社名、製品名は各社の登録商標または商標です。

■ 本件に関するお問い合わせ

株式会社日新システムズ
京都市下京区堀川通綾小路下ル綾堀川町293-1 堀川通四条ビル
TEL:075-344-7977
https://www.co-nss.co.jp/contact/