920MHz帯無線メッシュネットワークの国際標準規格

特定小電力無線920MHz帯を活用した屋外向けインフラとして、「Wi-SUN FAN」が注目されています。通信速度50K~150Kbps、マルチホップ、メッシュネットワークを簡単に構築できる「ちょうどよい無線」です。日新システムズは京都大学と共同でプロトコルスタックの開発だけでなく、通信速度の向上(600Kpbs開発中)、大規模ネットワークの実証を行い、社会実装に向けて取組んでいます。

Wi-SUN FANとは

ちょうどいいIoT向け無線通信

Wi-SUN FAN(Wireless Smart Utility Network for Field Area Network profile)は、次世代スマートメーターや流通オートメーション、家庭用エネルギー管理などのアプリケーション向けのメッシュ型無線規格です。

また、Wi-SUN FANは、オープンで標準なアーキテクチャを採用すると共に、世界的な規模で様々な産業におけるベンダーが同一の規格で実装しています。従ってベンダーに依存せず異なるベンダー同士の高い相互接続性があり、マルチベンダーの相互運用が可能な製品として多くのユーティリティ企業で採用されています。
スマートシティでは、スマート街路灯、駐車システム、交通管理など幅広いアプリケーションに対応し、農業や建物の健全性や資産の監視など、民間だけでなく自治体に向けてシームレスに相互運用出来る異なるサプライヤから提供される製品でシステムを構築することができます。
LPWA(Low Power Wide Area)の中でもWi-SUN FANはマルチホップ(多段中継)機能が大きな特長です。特に建物の多い都市部では電波の届きにくい不感地帯ができてしまいますが、マルチホップ機能により、不感地帯をカバーし、広域な通信エリアが実現できます。さらには伝送速度もIoT通信に適した速度であるため“ちょうどいい”無線通信と言えます。

他のLPWAとの違い

近年注目されている無線技術であるLPWAネットワークですが、それぞれの特性を比較してみます。LPWAを有効に活用するには、それぞれの特性を考慮して選択することが非常に重要です。
図はWANと接続されるゲートウェイを中心に電波の到達範囲を表しています。

長距離メッシュ型(Wi-SUN FAN)

メリット

  • メッシュ構成により広範囲をカバー
  • 50Kbps、100Kbps

デメリット

  • ホップ毎に遅延が発生

主な用途

  • 屋内外でのデータ収集及び機器制御

Wi-SUN FANのマルチホップでは、50Kbps、100Kbpsの何れかを選択してネットワークを構築します。速度は使用する無線の帯域に関係し、距離には大きく影響しません。それぞれのノードがカバーできる範囲は狭くなるものの、適切な配置によって不感地帯を減らすことができます。ホップする数は20段まで対応することができるため、非常に広範囲をカバーすることができますが、段数を重ねると1段毎の遅延が積み重なるため、ある程度の段数以上では別のPANを構成します。ある程度の通信速度を確保できることからファームウェアの更新なども可能になります。

長距離スター型(Wi-SUN FAN以外)

メリット

  • 単一のゲートウェイにより広範囲をカバー

デメリット

  • 密集した都市部では不感地帯が発生
  • 通信速度が遅い

主な用途

  • 屋外での低頻度・小データ収集

Wi-SUN シングルホップのスペクトラム拡散方式の通信では拡散係数を切り替えることができますが、到達距離を上げると速度は数百bpsまで落ちることになります(赤のエリア)。青のエリアでのモードはマルチホップと同等の速度となるもののカバーできる範囲が狭くなってしまいます。マルチホップでも似た傾向にはなりますが、ゲートウェイにトラフィックが集中しますので、通信速度と距離の調整を行うパラメータや運用など考慮する必要があります。

電波法での制限

電波法10% Duty制限では単位時間当りの伝送速度が鍵

Wi-SUN FANアーキテクチャ

既存アプリケーションとの高い親和性

Wi-SUN FANアーキテクチャをOSI参照モデルで表すと図の構成となります。各層は、IEEE、RFCなどの標準を基に実装されています。それぞれ標準を基に構築することで、プロプライエタリなコードの使用を避けると共に特許などの問題を解決しています。特にトランスポート層では、UDP/TCP(TCP実装はオプション)により既存アプリケーションとの高い親和性を持っています。

OSI参照モデルとWi-SUN FAN

Wi-SUN FANのトポロジー

マルチホップ機能により広範囲のエリアをカバー

Wi-SUN FANでは、ネットワーク層(レイヤ3)にてマルチホップ転送機能を実装しています。以下の図に示すように複数のPAN(Personal Area Network)を構成して運用することができます。用途によってPANで分割することにより柔軟にシステムを構築することが可能になります。それぞれのPANは、WANとの接続を行うためのゲートウェイとしてBorder Routerがあります。マルチホップはLeaf NodeからRouter Nodeを経由し、Border Routerへの転送で実現しています。一対のNode間は920MHz帯特定小電力無線の特性として見通しで数百mから1kmの遠距離通信が可能なことから、非常に広範囲のエリアをカバーすることができます。

Wi-SUN FANの利点まとめ

Wi-SUN FANには、以下の利点があります。

国際標準規格

  • 標準規格による高い相互接続性
  • 単一社に依存しないマルチベンダでシステム構成が可能

OSI参照モデルの標準

  • UDP/TCPにより既存アプリケーションとの高い親和性(TCPはオプション実装)
  • ユニキャスト/マルチキャスト

RPLによる動的ネットワーキングとマルチホップ転送

  • RFC6550を中心にしたRPL実装によるメッシュ構成により広域をカバー
  • 電波強度による最適なルーティングと障害復旧により高い堅牢性

レイヤ2 マルチ・チャネル・ホッピング

  • スケジュールされたチャンネル切替によりトラフィック増加でもレイヤ2レベル(IEEE802.15.4/4E)で相互干渉を抑制
  • PAN検出と自動参加
  • ネットワークの構築が容易

セキュリティ

  • RFC6550を中心にしたRPL実装によるメッシュ構成により広域をカバー
  • 電波強度による最適なルーティングと障害復旧により高い堅牢性

RPLによる動的ネットワーキングとマルチホップ転送

  • IEEE802.1x認証と暗号によるセキュアな通信

特定小電力無線 920MHz帯(日本国内)

  • 50kbps~300kbpsに対応
  • 回折性が高くホップあたり数百m~数kmまで到達

Wi-SUN FANの活用

離島での大規模災害時の対応(安否確認・インフラ被害の確認)

高専ワイヤレスIoT技術実証コンテスト採択

  • 離島における大規模災害時の安否状況やインフラ被害の確認
  • 海上から確認するための無線通信網の構築をWi-SUN FANで検証

Wi-SUN FAN活用メリット

  • マルチホップ通信による高い到達性
  • 高速通信による各種情報の伝達が可能
  • 低消費電力であるため、非常用電源での運用が容易
  • 自営ネットワーク網を構築できるため、外部サービスに非依存

大規模災害時におけるメッセージ通信維持

  • 自立電源による自営通信網を提供
  • ネットワーク不感地域をWi-SUN FANメッシュネットワークで構築
  • 大手通信キャリアに頼らない端末間メッセージ通信を実現

ユーティリティメータでの活用

  • リアルタイム、正確な使用量の検針
  • 自動的に電力使用量を収集
  • 双方向通信による「見える化」や付加価値サービスの提供

次世代広域電力制御

  • 電力の効率的な需要バランス調整

メッシュネットワークによる社会インフラ設備ソリューション

ユーティリティメータでの活用

  • フレキシブル/スケーラブルで密集した都市部から郊外までをカバー