鹿島建設株式会社(社長:天野 裕正、以下「鹿島」)は、SolidSurface 株式会社(代表取締役:酒造 孝、本社:千代田区、以下「SolidSurface」)および株式会社日新システムズ(代表取締役社長:永井 秀明、本社:京都市、以下「日新システムズ」)と共同で、「Wi-SUN FAN※1」を活用したロボット遠隔誘導の実証実験を羽田イノベーションシティ(以下「HICity®」)にて行い、“電波が途切れることで生じるロボットのコントロール不能時間”を短縮することに成功しました。
3社は今後も、HICityにて「Wi-SUN FAN」の新バージョンを用いたさらなる実証実験を予定しています。
Wi-SUN FAN システムの概要
HICityは羽田みらい開発株式会社(代表取締役社長:山口 皓章、鹿島などの9社による共同出資会社、以下「羽田みらい開発」)が事業推進する施設で、オープンな実証フィールドの場を提供しています。鹿島は、HICityを拠点にスマートシティの取組みを推進する「羽田第1 ゾーンスマートシティ推進協議会」とともに、モビリティ・ロボティクス・ツーリズム・ヘルスケア分野の実証実験を行っており、本件はその一環として行ったものです。
現在HICityでは、配膳や荷物運搬などのサービスが直面する人手不足という課題に対し、3社がその解消や効率化を目指してロボット遠隔誘導の実証実験を行っています。
従来、ロボットの遠隔誘導に利用されてきた4GやWi-Fiの通信電波は、壁などの障害物に影響を受けるため、建物の最奥部やエレベータ内に電波が行き届かず、ロボットが一時的にコントロール不能になるという課題がありました。そのため、今回の実証実験では、電波の到達距離が最長1kmと長く、かつ複数の 中継器間で網目状にネットワークを構築できる「Wi-SUN FAN」を4GやWi-Fiの補助として用いました。その結果、ロボットが広範なHICityのどこにいても“電波が途切れることで生じるコントロール不能時間”を大幅に短縮することに成功しました。これにより、さらに安定したロボットの遠隔誘導が可能となり、実際の運用においても高い信頼性が確保できることを確認しました。
実験時に利用した配膳ロボット「PayCarGo」
実証実験にあたっての各社の役割分担として、羽田みらい開発は実証フィールドの提供、鹿島はロボッ トの統合管制システム・ロボットインシデント管理システム※2を開発、日新システムズおよびSolidSurface の2社は以下の実証実験を担いました。
日新システムズは、京都大学(原田研究室)と共同で研究および実用化を行った「Wi-SUN FAN」における通信パラメータの調整について技術協力を行い、端末が複数の基地局を切り替える際に発生する通信不能時間を最小化することで、今回の実証実験で必要とされる通信の連続性を確保することに成功しまし た。
SolidSurfaceは、鹿島が開発したロボット統合管制システム、ロボットインシデント管理システムを4Gだけでなく、「Wi-SUN FAN」でも連携可能にしたエッジコンピュータ処理※3を担当し、それをSolidSurfaceが開発した決済機能付配送ロボット「PayCarGo」に搭載しました。4Gは通信容量・速度に優れる一方、その通信が途絶える場所では部分的に「Wi-SUN FAN」を補助手段として使用する必要があるため、実証実験では双方の通信回線を切り替えながら運行を検証しました。
今回の実証実験で用いた「Wi-SUN FAN」は、2024年度中にさらに伝送速度や伝送距離の向上が見込まれる新バージョンがリリースされる予定です。
今後、それを用いたロボット遠隔誘導の実証実験を改めて実施し、HICity 全体をオープンな実証フィールドとして活用するためのより良いネットワークプラットフォームの構築を目指します。また、新たな参画企業を募り、より広範な実証実験と技術開発の促進を目指します。
鹿島、SolidSurface、日新システムズ、羽田みらい開発の4社は、今後も技術革新を通じて社会課題の 解決およびスマートシティの実現に貢献していきます。
東京都大田区に位置する羽田空港(東京国際空港)に隣接した大規模複合施設。先端産業と文化産業をコンセプトに羽田みらい開発が運営しており、社会課題の解決に向け、技術のテストベッドとして運営されています。鹿島、Solid Surface、日新システムズを含む羽田空港第1 ゾーンスマートシティ推進協議会も当施設を拠点とし、様々な実証実験に取り組んでいます。
(参考)
大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY®」における実証実験で
複数メーカー・複数台のロボットを連携できる基盤システムの有効性を確認
(2023年5月11日プレスリリース)
https://www.kajima.co.jp/news/press/202305/11a1-j.htm
注釈
※1 Wireless Smart Utility Network for Field Area Network profileの略。 Wi-SUNアライアンスが策定した通信仕様。2.4GHzや5GHz帯を使用するWi-Fiと異なり、920MHz帯で使用され、複数の中継器を経由した無線マルチホップ方式により、屋外のような広い場所での通信に優れている。
※2 ロボット統合管制システムに内包され、ロボット走行中に重要な問題が発生した場合、管理者に通知するシステム
※3 全ての情報を集約しサーバーでデータ処理を行う方法と異なり、一部の処理を末端(=エッジ)のデバイスやサーバーで行い、加工後のデータのみをクラウドに送信する処理方法のこと
※文章中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。
※日新システムズによるWi-SUN FAN の研究および実用化について
本研究開発は、総務省戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)電波COE研究開発プログラムの公募で採択された「電波利活用強靭化に向けた周波数創造技術に関する研究開発及び人材育成プログラム(JP196000002)」における共同型研究開発「Society 5.0 の実現に向けた大規模高密度マルチホップ国際標準無線通信システム(Wi-SUN FAN)の研究開発」の一環として実施したものです。
株式会社日新システムズ
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